昔、小学生の頃、私はSF少年でした。SF(Science Fiction:空想科学小説)。
小学生から中学生の時が一番本を読んでいたのではないかと思います。本の”数”だけはですが。
それで最も多く読んでいたのがSFでした。
当たり前ですが、子供向けのSFは分かりやすいものが好まれます。ちょっとひねった内容のものだと子供には面白さが分からないからです(苦笑)
当時大好きだった作家にE.E.スミス(アメリカの作家)がいます。バロウズとかアシモフとかも好きでした。ハインラインやジュール・ベルヌやH.G.ウェルズも読みました。
大学生の頃は日本人作家にも好きな人たちが出てきて、小松左京や星新一は今でも記憶にあります。
とにかくE.E.スミスは大好きでした。2つの作品(群)があって、
①スカイラーク・シリーズ
②レンズマン・シリーズ
がヒット作です。①のスカイラークというのは宇宙船の名前です。主人公はリチャード・バリンジャー・シートンといって科学者です。②のシリーズはそのうち機会があれば話そうと思います。
シートンはある時、偶然にX金属という特殊な金属を精製して、ある条件下でこれを使い、別の重金属(最初は銅、あとでウランを使う)を完全エネルギー変換することを発見します。とんでもないエネルギー源を手に入れた彼は宇宙船を建造するのです。
それが「宇宙のスカイラーク号(Skylark of Space)」です。
スカイラーク号に乗ってシートンは太陽系を飛び出し、更には銀河系をも飛び出して大冒険をする、というお話です。
科学者であるシートンはどうやって宇宙船を造ったか・・・。
彼は研究者でX金属の精製はできました。でも宇宙船を造るのには莫大な建造費が必要です。宇宙船の材料は元より、建造する場所も必要で秘密裏にやりたいから何処でもいい訳じゃないのです。建造のために作業する人も要りますし、多額のお金が必要でした。それをどうしたか・・・
シートンには友人がいました。マーチン・クレインというのですが、実は大富豪なのです。同時にクレインはロケット研究家でもあった。宇宙船には興味があるから資金提供してくれた訳です。クレインは凄く良い奴なんです。お金持ちなのにそれを鼻にかけない。
彼が言うにはシートンの頭脳、技術と比べたら、自分の持っている財産なんか足元にも及ばないと言うのです。めちゃめちゃ謙虚です。
・・・それでシートンはスカイラーク号を造ることができたのです。
このお話・・・シートンやクレインのガールフレンドも巻き込んで、宇宙の別惑星や別星系で大事件が起きて・・・という宇宙大活劇(スペース・オペラ)になります。
本当にワクワクものでした。
スカイラーク号はマジンガーZの光子力や、スタートレックの連邦宇宙艦の反物質エネルギーを遥かに凌駕する完全エネルギー変換装置を持ち、超合金Zなどモノともしない宇宙レベルの超合金アレナックやイノソンを使った宇宙船です。
スカイラーク1号と2号は直径12mくらいの球形なんですが、スカイラーク3号になると全長3kmの葉巻型巨大宇宙船です。さらに「ヴァレロンのスカイラーク」という最終型の宇宙船は直径10,000kmの球体ですから地球サイズ規模です。
惑星みたいな大きさの宇宙船。これに乗ってシートンは大宇宙を航行します。
ただこれだと、不用意に地球の近くに寄ることすらできません。その質量だけで、地球に大影響を及ぼしてしまいますから。
それで話を戻すと・・・シートンはお金を必要としていた訳です。スカイラーク号を造るために。
そういうことは世の中ではよくあります。
アイデアや技術はある。
これはビジネスになる。
でも、それをやろうとすると・・・結構な額のお金(資金)が必要なんですが・・・手元に無いのです。さて、それで行き詰まります。
大体、何かビジネスをやろうとすると、事業を始める手続きに数十万円〜百万円くらいは必要です。
それで事業を実際に始めると、場所が必要だっていうことで、オフィスビルの事務所を借りるのに毎月数十万円かかる。
何か商品を売るということでも、商品や原材料の仕入れ、製造のための設備費、水道光熱費がかかる。それを造ったり売ったりするのに人が必要ですから人件費がかかる。
商品やサービスを売り出すのに広告宣伝費もかかる。
売れたら売れたで、その管理(会計、経理、人事など)にもお金がかかる。税金を払わなくちゃいけないから経理は必須です。
とにかく、いろんな原価やコスト(経費)が必要になるわけですね。
商売・ビジネスには随分、お金(資金)がかかると分かったでしょうか。アイデアや技術だけではできない。
昔は商売をするのには、元手をいくらか用意してこじんまりと始め、少しずつ大きくなっていくということがあったのですが、今ではそんな悠長なことは言ってられません。新しいビジネスを始めて、それが良いとなったら真似するライバルが出現したりします。
だから、ある程度の規模でビジネス・商売はやりたいし早くに実績を挙げなくちゃいけない。
で、どうする…。お金が必要なのですが、手元になかったら?・・・まずは借りることを考えますね。
貸してくれるかもしれないのは銀行でしょうかね。そもそも金を貸すのが銀行の商売です。
でも期限が来たら金利分の利息をつけて返済しなくちゃいけないし、そもそも当たるかどうか分からないビジネスに銀行はあまりお金を貸してくれません。
(そういうことはドラマ「下町ロケット」を観たら分かります)
返済の後はまたお金を工面する必要があります。そしたら、また借ります?
経営者は大忙しですね。お金を借りたり返したり。
落ち着いて本業のビジネスに専念できるのでしょうか?・・・ってことになるでしょう。
資金繰り(お金を用意すること)ばかりが仕事だという社長も・・・世の中にはいますよね(苦笑)
実は銀行はビジネスがある程度目処がつけば貸してくれるでしょう。多分ですが継続して貸してくれます。取引先銀行になってくれる。
お金の回収(返してもらうこと)がちゃんと見込めますからね。
でも最初は渋るでしょう。海のものとも山のものとも分からないビジネスなんですから。
そこでこの資金(ビジネスの元手)を用意する方法として「株式会社」が発明(?)されたのです。
最初は、友人・知人が資金を出し合って、ビジネスを始める・・・という発想だったのかもしれません。でも巨額の資金は何人かでお金を持ち寄っても・・・そうは集まらない。
なんか良い方法はないか・・・・
「会社(カンパニー)」を作るんです。
会社を作るに当たって「株式(株券)」というものを用意して売り出します。
これは資金提供の単位です。
例えば株式1株を10,000円とする。そしてビジネスの元手(開業資金、運転資金)として1億円必要だとする。
そうしたら株式1万株を売り出すわけです。
誰か買ってください〜って。
実際には株式の売り出し(「引受」といいます)などは法的制約がありますから、上記は単なるイメージで言いました。説明が分かりやすくなるようにね。
めでたく1万株が売れると1億円用意できたということです。これでビジネスが始められます。
1万株も一人で買える人いないですよね。・・・いや、いるかもしれません。世の中には大富豪がいます(笑)
とは言え、そんなにはいない。
でも、どうでしょう・・・10株くらいなら買ってもいいかも。10万円ですからね。
頑張れば買える・・・ってなりません?
そういう人が1,000人いたらいいのです。今の世の中、これは良いね・・というビジネスだと1,000人くらいの人は寄ってくるでしょう。
それで株式を買った人を株主といいます。たくさん買った人が大株主になります。
株主は主に2つの権利を持っています。
一つは経営に参加する権利です。ほとんどの場合、間接的にです。
株式会社の経営は取締役(役員)という人たちが複数でやりますが、その取締役を投票して決める権利を持っています。代表取締役が普通は社長です。だから社長を決める権利を持っていると言ってもいいでしょう。
株式1株に対して1票の権利がある。10株持っていると10票分の影響力を持つことができます。
100株持っていると100票分の影響力ですね。10票の人の10倍の権利です。
だから会社の経営に口出ししやすいのは大株主ということになります。
もう一つの権利は会社が業績を上げて利益が出ると、その利益の一部を株主に「配当」として還元します。
1株もっていると1株分の配当が入る。
大体の会社は1年単位で事業を管理しますから、1年間の年度末に決算して(売上や利益などを評価し会社の資産を評価します)、利益の中から株主は配当(儲けの一部)をもらう権利を持っています。
他にも色々な権利があったりしますが会社によります。主たるものは上記の2つで、どこの会社でもこれは必ずあります。
会社で大きな儲けが出ると、配当(お金)がバックしてくる。それも会社が事業を継続している間はずっとです。
なかなか・・・いいじゃないでしょうかぁ?
お金を”貸す”とすれば返済に当たって利息が1回つくだけですが、株主になると毎年、配当が入ってくる可能性がある訳です。
しかもその額は一定ではありません。意外と大きくなるかも・・・しれません。
その他にもちょっと良いかもしれない事があって・・・それは会社が上場会社になったりすると株式自体が売買の対象になります。株式が商品のような扱いになる。
株式市場(証券市場)に上場(公開という言い方の時もあります)したら・・・ですけれどね。
それで何が良いのか。
最初に株式を買った時(資金提供した時)は10,000円/株だったとしますね。
もしかすると、ある時この株が15,000円/株で売れるかもしれません。
世の中のみんながこの会社いいなぁ・・・と思うとその会社の株を手に入れたくなります。
欲しい人が増える訳です。
するとモノの需給関係からして値段が高くなります。
自分は10,000円/株で買ったけれど、なんだか世間では今現在、15,000円/株で買ってもいいと言っているみたいだ。
じゃ、売ろうかな・・・という訳です。売ったら5,000円/株の儲けじゃん・・・となる。
株式市場で取引されている株は、そういうことがあるから、売買して儲けることもあります。
配当(による儲け)を「インカムゲイン」と言います。後で説明した市場での売買による儲けを「キャピタルゲイン」といいます。
株主になると、もしかしたらですが、ちょっと儲かるかも・・・ですね。
それも事業自体は別の人(経営者、会社の役員)がやってくれて自分は見てるだけ〜でいいのです。
その人たち(会社)がうまくやったら、自分も儲かる。
株を手放す時も、買った時より高く売れれば、そこでも儲かる。
ほら、なんか良さそうでしょ。
ちなみに株価を気にする人たちというのは、この株主たちね。それとその利害関係者です。
そういう仕組みになっています。・・・って、どういう事か。
多くの人がビジネスの資金提供に関わることができて、儲けるチャンスが得られます。
そんなに巨額の財産がなくても、そういうビジネスに関われる訳です。
それで一人一人の資金提供額は小さくても、たくさんの人が集まる(可能性がある)から、巨額の資金を用意できます。
どんな大金持ちでも一人では限界があるけれど、株式の仕組みだと理論的には限界がありません。(ただし法的規制などで限界はあるかもしれません。・・・きっとあります)
そうすると、昔だったら国家(政府)くらいしかできなかった大規模事業が民間でもできたりするのです。それに関わる国民や市民が出てきます。
そもそも財産とか富は歴史的には権力者(王、貴族、特権階級、大商人、地主など)だけの所有物だったりしたのです。ところが、この仕組みを上手に使える一般人が大衆の中から現れたりする。
世の中のシステムチェンジが起こります。(起こりました。)
ただの平民、庶民の一人が、王や貴族よりも社会に対する影響力を持ちうるキッカケが出てきた訳です。
株式会社による「資本主義」経済が発展に発展を重ねて世の中の権力構造が変わった。
王や貴族や一部の武力を持つ人たちから、一般市民から出てきた経済力を持つ人たちに権力の一部(もしかすると全部?かも)が移り、そこから政治権力者(大統領とか首相とか)も出てくる社会になりました。
経済力のシステムチェンジがもたらした大きな影響について想像できるでしょうか。
その原動力の一つとなったのは技術の進歩で、特に工業力の進歩だったと言えます。
つまり産業革命ですね。
それは英国を中心とした西欧でまず起こりました。
そして世界中に飛び火した。技術の進歩と共に社会システムの変革も飛び火した。
日本では、完全な株式会社ではありませんが、坂本龍馬という人が「亀山社中」とか「海援隊」という組織を造りました。これはちょっと会社に似ています。
日本で最初の株式会社は小栗上野介という人が造ったらしいです。あまり知られていませんね。
それと日本での資本主義経済の基を築いた一人は渋沢栄一です。1万円札でお目にかかることになります。(^o^)
日本の名だたる大企業は一般市民が始めたものです。財閥系のものは、もしかしたら江戸時代の大商人や政商だったのだ・・・と言えなくもないのですが、今ではそのトップはいずれも一般市民から出てきた人たちです。
そしてその経済基盤の元に戦後の体制が作られ、今は自民党政権(現在は岸田首相)が担っている。
世界もそうです。王や皇帝が支配している国は・・・かなり少数と言ってもいいでしょう。
超大国である米国は大統領と議会が支配しています。そのバックに経済界があります。
中国でさえ中国共産党が支配している。皇帝はもはやいません。
ロシアは?ロシアもそうです。皇帝とその一族は排除されて、今はプーチン大統領が政治権力を持っています。
社会の権力構造を変えるキッカケになったのは、経済のあり方を大きく変えた「会社」の発明と言ってもいい。
資本主義に異を唱えた共産主義者(マルクス、レーニン・・・)たちもいましたが、社会を完全に変えるに至りませんでした。今や共産主義は北朝鮮くらい?それも権力者は金一族の世襲で、ちょっと歪んだ共産主義ですが。そもそも共産主義も資本主義の産物だという見方もあります。なかなか難しいのですが。
話はちょっと大きくなりすぎましたが、株式会社というシステムは大きな経済発展をもたらすキッカケになったということです。
資金(資本)提供を容易にする方法論として爆発的に世界中に広がり、大きなお金を動かすようになり、更には(ここが大事ですが)実体経済だけでなく金融経済をもたらした。
金融経済が現れて、それは実体経済以上に巨大化しやすい・・・そういう存在を世の中に生み出したということを覚えておくと良いでしょう。
(金融経済は巨額のお金を取引しやすい・・・実体がないから原理的にしやすいのです)
巨大な経済(実体経済、金融経済)の巨大な闇もそこから生まれてきます。
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