経済をどう考える(1):理系人間としてやってきた私が、還暦を迎えた頃に子どもたちに教えておこうと思ったのは・・・「経済」のことでした。

歳を取りました。60歳(還暦)を迎えた頃に、そもそも専門外の「経済」について思うところがあって、息子や娘たちには話しておこうと思ったのです。

人生の終盤を迎え、話しておくなら今のうち・・・と思ったのでしょうね(苦笑)

そもそも経済はただの金儲けの話ではない・・・といったら、皆さん、どうでしょう。興味がちょっとでも湧いたらご一読ください。

さて、経済について話そうとしているのですけれど、いや、経済に限らずどんなことでもそうなのですが、何かについて考える場合、いろいろな方向から見ることができます。

何であっても、只一つの見方だけがあるわけではなくて、いろいろな視点・観点とか、切り口とか方向とか・・・見方も多数あると言って良いのです。

つまり、理解に至るアプローチの方法は結構たくさんあるということです。それで、どの見方から考えると理解しやすいかは人それぞれで、立場や状況によって違っていたりします。

さて、私のような一般国民(大衆)が経済を見る場合、「収入・所得・賃金」の観点から見ると分かりやすい・・・”分かりやすい”と言いましたが、興味を持ちやすいと言うべきかもしれません。

単純な事実からすると、日本国民の「収入・所得・賃金」は30年ほど前と比べて減少しています。それは「実質賃金の低下」から分かります。

厚生労働省:平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)

このグラフは実質賃金の平均の推移を表しています。

実質賃金というのは、支払われている賃金額を、物価を考慮した係数を掛けて補正した賃金です。この数値はまさに「実質」の賃金ですから重要な数値(データ)なのですが、ちょっと曲者(くせもの)でもあります。

曲者であるという、ちょっと注意しておかなければいけない点を先に説明してしておきましょう。

実質賃金の元になっているのは「名目賃金」(数字としてそのままの賃金、単純に支払われた金額)ですが、この名目賃金は物価が上下することで、その「価値」は変わってしまいます。

そこで、名目賃金に対して物価を考慮して補正を加えた実質賃金が重要となるわけです。

例えば、米1kgを500円で買えた時の給与10,000円は米20kg分に相当するけれど、物価が上昇して米1kgが1,000円に値上がりすると(物価が2倍に上がったわけです)、給与10,000円は米10kg分にしかなりません。例としてはかなり大雑把で現実とは違うかもしれませんが、理解しやすいだろう数値にしています。

前者の場合の名目賃金「10,000円」に対し、後者の名目賃金「10,000円」は実質としては「5,000円」分でしかないということになります。実質賃金が1/2になったということです。これはかなり極端な例ですが。

この考え方によれば、名目賃金が同じ場合「物価が下がる」と実質賃金は上がります。更に言えば、名目賃金が下がっても、物価の下がり具合がそれよりかなり大きいと実質賃金が数字上は上がるという状況にもなります。

実質賃金が上がったという状況からすると、実際に買えるものは前より多く買えるのだから良いじゃないかと思うかもしれませんが、「名目賃金」って賃金の「額面」ですから、給料が下がったということです。給料下がったけれど、実質賃金は上がっているからいいよね・・・という認識は本当に良いの?・・・という疑問が残ります。

良くはありませんね・・・名目賃金が下がるというのは、経済の状態が悪くなっているのです。ところが、実質賃金という数値の上下だけ見たら上がっていたという、なんか数字のトリックだったりする訳です。

だから「名目賃金」もちゃんと見ていないといけなくて、「名目賃金も十分に上がって」、同時に「実質賃金も上がっている」という状況が好ましい訳です。

お分かりでしょうか?

全体状況を隠して「実質賃金」だけ(数値として)上がっているから経済政策がうまくいっていると政府が言うことがあります。・・・そういう時は、大体、国民をごまかそうとしている。そういう意味で曲者だと言いました。そういうことがあるから注意してね・・・ということです。

まあ、そういうことはありますが「実質賃金」がどうなっているのかが、原則としては重要です。

さてそれで、前述したように、ここ最近の日本の実質賃金はかなり減少傾向です。つまり国民は貧乏になっています。20年くらい前は、大雑把に言って40〜50代の年収が平均で500万円前後だったそうです。現在では400万円くらいではないでしょうか

(実質賃金が減っているというデータはGoogleで検索したら結構なグラフがたくさん出てくるので自分で確認しておいて下さい)

ちょっと前のことですが、物価が下がっているのにも関わらず、実質賃金も下がっているという状況でした。(最近はコスト高で物価が上がっています。最近の状況についてはまた別の記事で話します)

これは大変なことです。

大変なことなんだという認識がまず必要です。よく覚えておいて下さい。そして、実質賃金がそんなに下がっているのは何故なのか?ということを考えなくてはなりません。

一つの回答としては「日本はデフレだからだ・・・」ということができます。

デフレとはデフレーション(Deflation)の略で、私たちが普段買っている日用品やサービスの値段(物価)が全体的に下がる現象です。つまり、モノに対して相対的に貨幣の価値が上がっていく状態を指します。

ただデフレだから・・・仕方ない、ということでしょうか?
実のところ、デフレだったら、どうして賃金は下がるのか?とか考えることが大事です。
デフレは非常に深刻な問題です。賃金(収入)が下がってしまうからです。

ただ、賃金の話になると、次のような話がよく持ち上がりますので、ここでちょっと立ち止まって、考えておきましょう。

「賃金が下がる。収入が下がる」・・・ということは、稼ぎが悪いということだから、”最近、日本人は稼がなくなった”・・・ということもできるかもしれません。さらには「怠けている・・・」という考えを持つ人もいるかもしれません。

ここ数年〜10数年、そういう話をよく聞きませんか?

「日本(人)の労働生産性は先進国では最低だ」と言うことを軽々しく持ち出す人(中途半端な知識人に多い)がいます。その背景には「怠けている」的発想を持っているのではないですか?

さらに言えば、日本人それぞれは気持ちでは頑張っていても
「ビジネスが上手くない。新しい発想とかないし、起業家も少ないし、諸外国から立ち遅れているから収入も下がるのだよ」
ということを考える人が結構いるように思えます。

一応、わたしの見方を最初に言ってしまえば、ほとんどハズレていると思っています。

「稼がなくなった」というのは、数字上の事実だけから言ったとすれば、当たっているのかもしれませんが、「稼ぐ」という行為をしなくなった、もしくは意識しなくなった・・・という行動に対する意識の点では決してそういうことはありません。

今だってみんな「稼ごうとしています」。私たちの前世代ほどの貪欲さはなくなった・・・ということは少々当たっているかもしれませんが、貪欲さが少なくなったことが稼げなくなったことの最も大きな原因とは思いません。

みんな「稼ごう」としているのに「稼げない」のですよ。だって、それだけの”仕事がない”のです。
仕事がないというのは「質・量」両方の意味です。つまり値段の「高い」仕事が「たくさん」あれば、日本人はもっと稼ぎます。それだけの能力があるのですから。

日本人(の能力)、ナメんなよ・・・と言いたい。

日本社会は今、デフレなんです。「供給力」は十分にあるのに「需要」が少ないのです。だから、仕事(その成果としての商品やサービス)が安くなっていて、かつ量も減っている。

仕事が少なくて、あっても安いから、大きな「売上・利益」(お金)にならないのです。

この「売上」が大きくなることが経済規模が大きくなるということですが、それが小さいのです。それでGDPも小さい・・・正確に言うと・・・GDPの成長率がほとんどゼロで、経済成長していないという事実があるということです。

GDPとは「Gross Dmestic Product」の頭文字を取った略称で、「国内総生産」を指します。1年間などの区切られた期間内に、国内で産出されたモノやサービスの付加価値すべての合計金額を表します。

ところで、そんな国は(先進国では)他にはないらしいです。ほとんどの国が何らかの経済成長をしているのに、日本だけ、ここ最近、全然、経済成長していないのです。先進国の中でもダントツで低い。(Googleで「GDPの成長率」について検索してみて下さい。日本は先進国最低です)

日本経済を「賃金」の点から見るアプローチでそういうことが分かるわけです。

さてそれで、その数字だけ見て、日本(経済)はもうダメだ。衰退に向かっているという人も結構います。(「日本、オワタ」)
このままなら、確かに衰退に向かっているのは事実です。ただ、根本的にダメだというのも嘘です。実は「経済」を正しく認識したら、日本はかなり希望があるのです、今のうちは・・・ですけれどね。

(続きます)

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